3、ばら撒け!
「いきますよー!皆さんいいですか?」
「おう!いつでも来い!!」
「僕、一番大きいの取るんだー!」
「テン!始めてくれ!」
「はい!」
ここはある海の上、の船の上、「宝」と大きく書かれた帆の下に七人の若者がいる。世は「バレンタイン」という行事の真っ最中であり、七福神の代理を務める彼らも例外ではなかった。
弁財天代理の少女テンは二階のテラス部分から身を乗り出し、手には六つの小さな袋を抱えていた。階下の甲板には同じく代理を務める少年や青年がこちらを見上げている。
そして、この宝船ならではの「バレンタイン」が始まった。
「それっ!」
テンは抱えていた袋を一斉に投げはなった。タイミングを同じくして大黒天代理ダイコクの肩を踏み台に、寿老人代理のジュロウが高く跳ぶ。
「よっしゃー!!一番でかいのゲット!!」
「うわぁっ!ジュロちゃんずるい!」
ターゲットをしっかりと手中に収めて綺麗に着地する。
「あっはっは、こういうのはな、一番無難そうなやつが実は当たりだったりするんだ」
と、得意げに近くに落ちてきた袋を福禄寿代理のロクジュがキャッチする。他の恵比寿代理ビスや布袋代理ホテも各々でしっかり受け止める。毘沙門天代理シャモンにいたってはまったく無駄の無い動作で易々と取ってみせた。
「ほら、ダイちゃん頑張って!」
「うん!最後の一個は・・・あそこだ!」
最後の一つが甲板の床に迫る。ダイコクはとっさに飛び込んだ。
落下するチョコ、飛び込むダイコク。そして床につくかつかないかの瞬間、寸前のところでダイコクは指で袋を上に弾き、見事手の内におさめた。スライディングの際、油断しきっていたジュロウを巻き込んで。
「やったよ!取った!」
「ダ、ダイコク!重い、痛い、どけろ!こんな形で復讐かぁ!!」
かくして、若者達は無事にチョコレートを手にすることができたのだ。
「「ごふぅっ!!」」
「えっ、ちょっとどうしたんスか!?大将?ジュロウ?」
「「か、からっ・・・!!」
「テ、テンさん・・・・?」
「あ、ダイコク様から普通どおりじゃつまらないから、ロシアンルーレット風にした方がいいとアドバイスを頂いたもので」
「は、はいほふ、てへぇ(ダ、ダイコク、てめぇ)・・・ごほっ!」
「く、くひのははがはへるっ(口の中が焼けるっ)・・・テン、ひふをっ(水をっ)!」
「はい!」
「ところでダイちゃん、いったい何を入れたの?」
「・・・・・・ハバネロ原物、えへっ」
「「『えへ』じゃねぇーーーーーー!!!!」」
縁起をかついで持ち撒き風ってことで・・・