3、 守護する者・ライグ
「ピヨ〜ピヨッピヨピヨ!」
にわとりとひよこを混ぜた感じのニワコが鳴いた。夜明けの合図だ。
「っよし!さあ行こうピロロ・・・。」
「キューイ!」
カインとピロロはゴリオンの住む森へむけ、勢いよく家を飛び出した。
「兄ちゃん!」
ビクッ!コケッ!ズガン!
突如カインの目の前に十一ぐらいの少女が現れた。あまりにも突然の事にカインは驚きのあまりつまずき、顔面を地面に打ちつけた。
「いった〜・・・。サラ!せっかくいい感じの出発だったのにぶち壊すんじゃないよ。」
「だって兄ちゃんが悪いんだよ。私に『いってきます』の挨拶もなしに行こうとするんだもん。」
目の前に現れた少女はカインの妹、サラだった。髪が長く、とてもかわいらしい女の子だ。
「だってサラ、すんごく熟睡してじゃないか。わざわざお前を起こしに行って蹴りをくらおうとは思わないからね。まあ熟睡してない時の方が恐ろしいか・・・半径一メートル以内には近づけたものじゃない。」
「うるさいなーもう!とにかく、わざわざ私が見送りに来てあげたんだからね。まだ寝てる父さんたちだってきっと、兄ちゃんの力を信じての事だろうから私が代理としても来たの。」
「そっか・・・。(父さんたちのことだから普通に寝坊助なだけだと思うけど・・・)」
「それじゃ・・・いってらっしゃい!」
「ああ、いってきます。」
とにもかくにもカインとピロロは出発した。
ゴリオンの山、そこは村のすぐ後ろにある中腹あたりから上は徐々に木々が少なくなっていき、頂上は木々どころか植物が一切はえていない。ゴリオンの山といっても、ゴリオン自体森の奥に住んでいるのでめったに出くわす事はない。
そしてカイン達は丁度山の中腹あたりまで来ていた。
「ふ〜、やっと半分か。『セントアニマル』がいそうといえば山頂だからな、がんばらないと・・・。うっし、行くかピロロ!」
「キュキューイ!」
カインは山頂を見上げながら気合を入れた。
その時地響きし、二体のゴリオンが突進してきた。
「ちっ、いきなり二体か!召喚!炎の第一魔法灼熱の熱風!フレイムブレス!」
ボッ!
一瞬にして二体のゴリオンは黒こげになった。
「よっしゃ!いっきに撃墜!」
ガサッ!
今度は後ろからゴリオンが一体、飛び出してきた。
「くっ!」
「キューイ!」
ピロロはゴリオンの前に立ちはだかると、なんと口から炎をはいた。
「_*‘|〜=_?‘*_?!」
そして見事にゴリオンを黒こげにした。
「サンキューピロロ、よくやった!」
「キュキューイ!」
ピロロは嬉しそうにしっぽを振った。
「にしても、やっぱりこの山でなにか起きてるな・・・。よし、また山頂めざしてがんばるか!」
「そうはさせぬ・・・。」
バッ!
カインは素早く後ろを振り返った。そこには少し長めの銀髪に紫の瞳、シンプルな黒一色の衣装を身にまとい、腰には黒に映えるシルクの長い布を巻いたカインと同じくらいの歳の少年が立っていた。
「・・・いつのまに、っていうかそうはさせぬって・・・?」
「フン、俺は『セントアニマル』をたたえ守る部族、スカイレイクのライグ・ダーク。『セントアニマル』の命を脅かす者には容赦せん。」
「『セントアニマル』だって・・・。それに命を脅かす者?オレはたしかに『セントアニマル』を追ってここに来たけど、命を脅かすって・・・。」
「グラウンドスピアー!」
グラッ!ズドドド!
ライグが杖を前に突き出し呪文を言うと、突然地面が揺れて無数の土の針が飛び出した。
「くそっ!」
カインはピロロを抱え、すんでのところでかわした。
「なにすんのさ、いきなり攻撃なんて!・・・・・・それと・・・お前魔法使いだな。」
「ああそうだ、魔玉使い。お前の実力はさっき見せてもらった・・・だが、山頂へはなんびとたりとも通さぬ!どうしてもと言うならば相手をしてやる。」
「ちっ(これは避けて通れなさそうだな・・・)わかった、相手をしてもらおうじゃないか。」
「いいだろう。」
ライグは杖を天高く掲げ叫んだ。
「ライトニングソウル!」
すると稲妻が唸りをあげ、光を散らしながら向かって来た。
「召喚!風の第四魔法風の防御壁!ウィンドウォール!」
カインの目の前に風の壁が現れた。
バリバリズドーン!辺りにすごい衝撃音と砂煙が立ち込めた。
「ちっ、かろうじて防いだか・・・。だが次は逃さん!メテオウォーター!」
突然空から多くの水の塊がものすごい勢いで降ってきた。
ドガガガガーン!
「くっ!」
カインはなんとか直撃をまぬがれた。
「ふっ、直撃をまぬがれようとしょせん逃げる事で精一杯か。」
「っなわけないっしょ!召喚!氷の第二魔法吹きすさぶ霰!ヘイルストーム!」