舞曲〜メヌエット〜

 

 「問題はお母さん達になんていい訳して青界に行くか、ね」

 「親御さんに俺たちを見られるだけの力はないんだな」

 「ええ、せいぜい霊感とか強いのはお婆ちゃんくらいじゃないかしら」

 この少女奏(かなで)をスカウトに来たカシルとセイルは、青界へ行くことを決めた彼女とともに帰途についている。しかし奏は家に近づくたび足取りが遅くなる。何故なら青界へ行くといっても無断で出て行けば行方不明扱いを受けかねない、しかしカシル達の姿が見られない両親達に事情を説明しても理解してくれる確率は低いのだから。

 「じゃあ奏はお婆ちゃんからその力を継いだんだね」

 「そうね、たしか現役時代は神社の巫女さんをやってたらしいから」

 「う〜ん」といくら頭をひねってもいいアイディアが浮かんでこない。こうしている間にも家は近づいてくるというのに、気持ちは焦るばかりだ。

 「おかえり、奏」

 不意に目の前に現れた老婆・・・

 「お、お、お婆ちゃん!!!」

 「へぇ、この人が奏のお婆ちゃん」

 「ええ!もう着いちゃってる!!」

 考え事に集中しすぎていたせいでいつも間にか家の前まで来ていたらしい。玄関の前に奏のお婆ちゃんが立っていたのだ。

 「な、何でお婆ちゃんが玄関にいるの?」

 「ちょっと不思議な気を感じてね、様子を見に来たんだよ」

 不思議な気とは間違いなくカシル達のことだろう。力は衰えてはいないらしい。

 「ん?ああ、あんた達だね気の正体は。悪いが軽くでいいから顕現してくれないかい?現役から退けてだいぶ経ってしまったから、うっすらとしか見えないんだよ」

 驚いてもいない、動じてもいない、流石といったところか。現役時代はさぞいろんなものに出くわしたのだろう。

もしかして以前会ったことがあるんじゃ?奏はおもわずそう考えてしまう。

 「初めまして、自然王の補佐をやってます氷の化身カシルです。いや〜、まさかこれほど肝の据わった方とは・・・それも今でもかなりの力を持ってますね」

 「現役時代はもっともっと凄かったよ。そこらの妖怪なんぞ一捻りじゃった」

 「初めまして、同じく自然王の補佐で風の化身セイルです。お話はお孫さんから少し聞いています。えっと、これくらいでよろしいでしょうか?」

 「いいよ、よーく見える。それより敬語なんて必要ないよ、タメ口でいい。きっとあんた達の方が長く生きてるんじゃないのかい?」

 「ええまあそうなんですけど。スカウト対象者の身内が相手なら敬語を使わないと、分厚い本の背表紙でぶん殴られるんですよ〜、『そう教えたはずでしょう』って」

 すでにアハハという笑までもが飛び交っている。さっきまで騒ぎまくっていた自分はなんだったのだろう、と奏は思うのだった。

 「というわけだ、奏。気をつけて行ってくるんだよ」

 「へ?」

 今のは間違いなく送り出しの挨拶。もしかして呆然としている間にそこまで話が進んでしまったのか。

 「ちょ、お婆ちゃん!行ってくるんだよって、私がいきなりいなくなったりしたら・・・」

 「大丈夫だよ、あたしの方から奏を巫女修行のため知り合いの神社へ行かせた、って娘達には言っておくから。そのかわり、帰ってきたときの雷は覚悟しておくんだよ」

 「ええ!?」

 またさっきまで必死になって言い訳を考えていた自分が可哀想になってきた。こんなにもあっさり認められ、理由まで出来上がってしまったのだ。本当にこの祖母は寛大というか偉大というか、なんだかすごい。

 「ほら、しゃんとしなさい奏。人々のため、大切な役に就くんだろう?あたし達が心配しながら帰りを待っていてあげるから、しっかりがんばってくるんだよ」

 「お婆ちゃん・・・」

 「ま、たまには連絡のひとつでもくれればいいさ」

 「・・・うん、絶対する。ありがとうお婆ちゃん、私頑張ってくるね!」

 祖母の優しさに涙が滲んでくる。いいかげんなようでちゃんと見ていてくれる、ちゃんと心配してくれている、ちゃんと『頑張って』と送り出してくれる。お母さん達にはちょっと悪いけど、これが一番の方法なのかもしれない。そのかわり、ちゃんと頑張ってくるから。

 二人のやり取りを見守っていたカシルとセイルの頬もほころぶ。

 その後、奏は一通りの身支度を終えると、カシル達と共に旅立っていった。

 

 

 「で、私はどうやってその青界に行くの?」

 素朴な疑問をぶつける。そもそもどこにあるのかもわからない。

 「大丈夫、上でシアが術で引っ張ってくれる手はずになってるから」

 問題ないといわんばかりの笑顔で天を指差すカシル。それを見てセイルがまた呆れの溜息を漏らした。

 「こほん、えーと青界は遥か上空にあるが常人には見ることも触れることもできない、いわゆる別次元にあるんだ。化身の俺たちにとっては別に問題ないのだが、人間が行くとなるとそれなりの入り口がなければいけないということだ」

 「なるほど・・・流石セイル君ね、わかりやすい」

 ようするに青界まで私が行けるよう、そのシアという人が特別な入り口を作ってくれるということね。セイル君の説明は本当にわかりやすい。

 「あいつに限って忘れてるってことは絶対無いだろうけどちょっと遅いな・・・手間取ってる?」

 カシルは額に手を当てて空を見上げる。空はもう夕焼け色に染まり、カラスさえも帰途についている様子である。これから旅立とうという方がおかしいことに感じてしまう。

 「やはり一晩くらい家族と過ごしてからの方がよかったんじゃないか?」

 「いいのよ、だってちょっとでも話題になっちゃえばすぐばれて足止めされちゃう。それにいいの?私が心変わりして行きたくないって言い出しても」

 「・・・そうか」

 セイルは先ほどから何かと奏を気遣ってくれる。いきなり現れて無理な頼みをしてしまったことに、申し訳なさがあるのかもしれない。しかし、たしかに無理な頼みをされ承諾したが、それはあくまでも奏自信の意思である。だから奏は『大丈夫』と笑うのだった。

 「ねぇ、そういえば私が青界に行って役に就く期間って、どれくらい?」

 「ああそれはまだ―――」

 「三ヶ月」

 セイルが答えようとしたところをカシルが途中で遮る。疑問詞を浮かべたセイルがカシルの方を見るが、カシルは背を向けたままもう一度答える。

 「三ヶ月で終わるよ。それまで頑張ってね」

 「カシル・・・」

 語尾のところで振り返り、笑いかけるカシル。だがセイルの顔には疑問詞が消えた代わりに、一瞬だけ険しい表情が見えた。奏にはまだその意図するところがわからない。

 ふわり・・・

 「きゃっ」

 いきなり地面から足が離れ、驚いて辺りを見てみると、三人を淡く白い光が包んでいた。

 「これが入り口?」

 「そうそう。この光は常人には見えなくって、もちろんこの光の中にいるオレ達も見えなくなっているんだよ」

 「だから人が空を飛んでいると驚かれないですむ。安心しろ」

 ゆっくりと上昇して雲に近づいていく。どんどん小さくなっていく景色は観覧車どころの絶景じゃない、本当に綺麗で自分が鳥になったような感覚になる。キョロキョロと目を輝かせて辺りを見る奏に、化身の二人も頬を緩めるのだった。

 「すっごーい!こんな体験私初めて!」

 「それはよかった。喜んでくれたのなら、ちょっと俺達も報われる」

 「やっぱり気にしてたのね。そりゃあ最初はびっくりしたけど、最終的に決めたのは私の判断なんだから、そんな悪いことしたような顔しないで」

 「奏・・・すまない、ありがとう」

 奏が笑う、セイルも笑う。カシルは二人の様子に安堵のような表情をした。

セイルとは長い付き合いで、世話焼きなのも責任感が強いのも知っている。いつもなんだかんだ言いながら自分をサポートし、フォローもしてくれる親友。だから今回のこと、無茶なスカウトに関しても負い目を感じてしまうのではと心配していた。だがスカウト対象者の奏と彼が笑っているのを見て、その心配は消えていったのだ。

 「ねぇカシル君、シアさん?ってどんな人?」

 「へ?」

 突然振られた少女からの疑問。ほんの数時間前まであれほど騒いでいたのに、今は普通に話しかけてくる。順応性が高いというか、肝が据わっているというか、その辺はあのお婆さんに似たのだろう。

 「シアのこと?」

 「うん、だって二人の会話に何回か出てきたし、私を運んでくれているこの光もその人のものなんでしょう?だからなんとなく気になって」

 「シアねぇ・・・奏にとっては先輩になるんじゃないかな?たぶん三つくらい年上の女神官だよ。腕利きのね」

 「へぇ、そうなんだ〜。二人とはけっこう仲いいのね、そんな感じがする」

 「まあ、よくつるんではいるな。というよりカシルの奴が、あいつの仕事の邪魔しているだけのようにも見えなくはないがな」

 セイルがじと目で口を挟んできた。『誰のせいでいつもそのとばっちりを受けている』とでも言いたそうな目でじぃーっと。

 「じゃ、邪魔なんかしてないよ。ただあそこが昼寝には丁度いい場所なだけで、オレは静かーに寝てるんだってば」

 屁理屈にしか聞こえない反論だが、カシルは正論とでも言いたそうにうんうんと頷く。

 「あっそれでね、怒ったら分厚い本の背表紙で殴られるから気をつけたほうがいいよ」

 「ええ!?」

 「お前だけだろ・・・安心していいぞ奏」

 お婆ちゃんと話しているとき言っていた、本で殴るといのはシアらしい。いったいカシルはどんなヘマをやらかしたんだろう。二人の話を聞いていて不安やら好奇心やらが一層増した奏であった。

 「まあ面倒見もいいし、いい先輩になってくれるんじゃない?あとは、そうだな・・・」

 考え込む素振りをするカシル。あくまで素振りであるところがこの少年の食えないところだ。それとも本当に悩んでいるのか・・・

 「あとシアはもう極度の意地っ張りでさあ―――」

 「ふうん、極度の意地っ張りね・・・」

 可愛らしさもある澄んだ声がカシルの後から突然聞こえた。その声にハッとしてまばたきを数回すると、いつのまにやら光は消えてどこかの建物の中に立っていたのだった。

 そして先ほどの声の主はカシルの背後からひょっこりと顔を出し、奏の前まで歩み寄った。背は奏より少し高くて十代半ばほど、大人びた雰囲気を持った少女である。

 「初めまして、私はシア。あなたが奏ちゃんね?よろしく」

 「は、初めまして!日浦奏です!」

 慌てて初対面の挨拶をする。歳は少ししか変わらないはずなのに、綺麗で大人びて見えるから、少し緊張してしまったのだ。

 (へぇ、この人がシアさん・・・)

 シアは肩くらいのオレンジ髪に青い瞳で、白を基調とした制服のような服装を着ている。おそらく神官の制服なのだろう。やや短かめのスカートとふくらはぎの上まである長いブーツがよく似合っている。女の奏から見てもシアは美人だ。

 「驚いたでしょ?ごめんなさいね、いきなり。カシルがスカウトって聞いてからずっと心配してたんだけど」

 「・・・オレってそんなに信用無いんだ。悪ぅござんしたねぇ〜」

 「実際、セイルがサポートしてくれたんでしょう?」

 「それは、まあね・・・うん」

 事実なだけに言い返せない。そんなカシルとシアの見事ともいえる掛け合いが続く中、奏はシアをじっと見つめていた。

 穏やかそうでしっかりしてそうな女性。なんとなくカシルが言っていたイメージとは異なる感じがする。本当に分厚い本なんかで殴るのか?信じられない。

 「奏ちゃん、一応新米神官ということになってもらうんだけど、いいかしら?それで制服もあるからサイズ合わせしたいんだけど・・・」

 「あ、はい!わかりました!」

 「緊張してるの?オレのときとはえらい違いなんだけど」

 「気質の問題なんじゃないか?」

 セイルの鋭いツッコミが入り、カシルは「ああ、そう」と声のトーンを落とす。だが、奏がシアに連れられて行こうとしたとき、カシルはシアを呼び止めた。

 「シア」

 「ん?何、カシル?」

 「・・・また徹夜?」

 カシルの言葉にシアは驚いた表情をし、少し戸惑ったあとパンパンと自分の頬を叩いた。まさか顔に出ているとは予想外とでも言うように。だが奏にはそんな違和感は感じられない程度である。

 「しょうがないでしょう、仕事いっぱいあるんだから」

 シアはくるりと踵を返し、奏の手を引いて歩き出した。

 「そのうちでっかいクマ出来るんだから」

 「そ、そんなこと・・・平気よ、大丈夫。自己管理くらい出来るわ」

 一瞬の戸惑ったふうすら、誤魔化すように足を速める。たしかに意地っ張りのようだ。

 扉を出ていった二人の見送った後、カシルは小さく呟いた。

 「それが一番苦手なくせに・・・・・・」

 

 

 青界は、というよりも今いるこの建物はすごく独特な印象を持っている。色は西洋の神殿をイメージさせる白、造りは東洋のような細かい細工模様で造られている。天井も高くて柱は太い、廊下を歩くだけでもとてつもなく大きな建物であることがわかった。

 「あの、シアさんここは、どこ?」

 「ここは自然王の・・・人間界でいえば王宮って言うのかしら?まあ仕事場みたいな感じね。私達もここで王を助ける仕事をしてるの」

 大きさだけではなく、格式もとてつもなく大きかった。驚きと不安で顔を引きつらせる奏にシアは優しく肩に手を置く。

 「奏ちゃんは大体私と同じような仕事内容になると思うわ。私は神官だけど術や儀式の他は主に書庫管理をやっているの」

 「シアさん・・・」

 「大丈夫、わからないことがあったら何でも訊いて?」

 綺麗に清掃のいきわたった廊下を歩きながら、シアはいろいろと説明し、奏はひとつひとつに驚きながらも頷いていく。並んで歩く二人の姿は、すでに先輩後輩として絵になっていた。

 「あれ、そういえばまだ誰ともすれ違ってない・・・」

 けっこう廊下を歩いたはずなのにすれ違う人はいない。王殿ということでもっと多くの人が働いているはずなのに。

 「今はみんな出掃っているのよ。悪魔のことは聞いてる?その悪魔が世界中で出没しているから、地元の術者だけじゃ手が回らないって助っ人に行ってるの」

 「世界中・・・」

 「だからほとんどの力のある神官や官僚達は留守ってわけ。私はまだ若輩の身だからあんまり出動はないけど」

 笑ってみせるがどこか寂しげで、悔しいといった苦笑いになる。やっぱりシアも出来ることなら行きたいのだろう。

 シアかすかに足並みを速め、奏はそんなシアの後についていった。

 

 

 「うん、やっぱり丁度いいわ。似合ってる、可愛い!」

 「エヘヘ、そんな、私照れちゃうな〜///」

 セーラーの襟に赤いタイ、白を基調とした神官の制服は見習い様、しかしそれは奏にとてもよく似合っていた。本人は頬を赤く染めて照れているが。

 「じゃ、制服も準備完了したことだし、行きましょうか?」

 「へ、どこに?」

 パンとかしわ手を一つ打ってシアは立ち上がる。

 着いて早々先輩神官と対面、その後制服合わせに移動、今度は何があるというのか?さすが忙しいということなのか、なんというか忙しないスケジュールだ。

 「玉座よ、自然王の。王殿に来たからには挨拶しておかなくちゃ」

 「へぇ〜・・・・・・・・・え?えええぇぇええぇえ!?」

 奏は声のかぎり叫んだ。王様は王様でも自然界の、しかも全部を統括している王様に謁見するなんて今まで考えたこともなかっただろう。むしろ考える人間の方が少ない。

 「そんな王様に、私が、謁見・・・?なんかデカすぎて、混乱する〜」

 「大丈夫、私も付いてるから。それに怖い方じゃないわ」

 怖いとかそういう問題じゃないんですってばシアさん〜・・・

 混乱続きでどんどん奏の精神は鍛えられていくのであった。

 

 

 「シアの奴、徹夜癖ついちゃってんじゃないかな〜?」

 外に面したベランダ風廊下の手すりに腰掛け、足を宙にぶらつかせながら、空を眺めながらなんとはなしに呟いてみる。

 「極度の意地っ張りのくせに、極度の寂しがり屋ね〜・・・」

 手すりの上で回転椅子の如く一回転。手を頭の後で組み、もう一度空を見上げる。

 「独り言、でかいぞカシル」

 「セイルこそ、独り言聞くなんて人が悪い」

 右の方からセイルが廊下を歩いてくる。カシルは目をセイルにやると同時に体を半回転させ、廊下側に足を投げ出す。

 「あいにく、俺は人じゃなくて化身だからな」

 「屁理屈・・・」

 「お前に言われたくないな。で、シアに関してはまだ癖の手前じゃないか?」

 「ま、そうだね〜手前には変わりないけど」

 手すりから飛び降り、今度は後ろ向きに両肘を乗せて寄りかかる。

 「だから、お前がいつもいるんだろう?」

 「どういうことかな?」

 挑発的に聞き返すカシルに対し、セイルは手すりに右手を置き、カシルとは逆に空へ目を向けて答える。

 「シアの仕事中、お前がそばの本に埋もれながらも昼寝しているのも―――」

 「オレはやりたいことやってるだけだよ」

 セイルの言葉を遮ってはっきりと言い切るカシル。はっと振り返ってみれば満面の笑顔のカシルがそこにいた。小さく息を吐く。

 「・・・そうだな」

 長い廊下の先を見てみれば二つの人影が並んで歩いているのが見えた。制服合わせの済んだ奏と、その隣には微笑むシアの姿がある。奏の方がこちらに気が付いたらしく、大きく手を振っている。

 「セイル」

 カシルは手を振り返しながらセイルの名を呼ぶ。声はこころなしか落ち着いている雰囲気を持っていた。じっと言葉の先を待つ。

 「オレは、大丈夫だから」

 一言、それだけだった。しかしセイルには十分伝わり、カシルもそれを知っていて一言に込めた。きっとお前ならわかってくれる、そんなことずっと前から知ってるから。

 セイルは静かに足を踏み出し、カシルと肩を並べる。

 こいつはこういう奴だ。預けられっぱなしの背、ちゃんと俺が支えてやろう―――

 「お前の大丈夫など、あてになるか」

 「ひっどーい!ほら、セイル大きく手を振りましょう」

 「俺はいい、遠慮しておく」

 

 

 響け―――

 

 

 ドーーーーーン!!

 突如激しい破裂音が鳴り響き、続いて地鳴りが襲う。

 「何だ!?」

 音は空中でした。勢いよくその方向を見てみればそこには・・・

 「悪魔だと、青界にまで出現したのか!!」

 「しかもなんか団体さんみたいだよ、軽く30は超えてる」

 黒い肢体を持った悪魔がわらわらと宙を飛んでいた。確認できるだけでも30匹はいる。普段青界は結界に守られているが悪魔が出現したということは、先ほどの破裂音は結界をやぶった音だったのか。

 「どうする、カシル?」

 「どうって、決まってんじゃん・・・殲滅作戦今すぐ開始だよ!」

 青界の空を飛び交う悪魔達を放っておくわけにはいかない。どうして出現したのかはわからないが、カシルとセイルは悪魔の群れに向かって飛び出した。

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